千葉県香取郡多古町北中の谷津(やづ)集落に伝わる「谷津の神楽」。 

7月の最終日曜日、日蓮宗中道山妙観寺に集落の消防団の若者が集まり、幣束を作ります。その後、獅子頭、赤鬼面、黒鬼面、幣束、酒を持って寺の裏手にある弁財天社に供えます。午後になると、寺で鬼と獅子に扮して、集落40軒を廻り赤鬼、黒鬼、獅子舞が邪気を払って廻ります。お囃子や太鼓などの鳴り物がないので爆竹を鳴らしながら、奇声を上げてのムラ廻りです。 

各家では、獅子に頭を噛んでもらい、邪気を払ってもらいます。昔は家の中まで上がりやっていましたが、近頃では玄関先や庭で済ます家も多くなってきました。 いつ頃から始まったのかは定かではありませんが、明治初期に生まれた方が小さな頃には、すでに始まっていたと言われています。昔は、土用干しの頃、朝七時に寺に集まり、素麺、酢の物、冷奴を準備します。九時頃、集落のおばあさん達が来て、弁財天に供えられた獅子頭、赤鬼面、黒鬼面の前でお経を唱え、清めたものを寺に持ち帰ります。朝準備した行事食を食べ、お神酒を酌み交わしてムラ廻りに出かけたということです。今はおばあさん達も高齢になりその風習は途絶えてしまいましたが、ムラ廻りだけは消防団の人たちが継承しています。