毎年11月11日 千葉県香取郡多古町牛尾(うしのお)の白幡神社で行われる「蛇祭り」(じゃまつり)。いつ頃から行われているかははっきりしないが、二百年もの歴史があるとされている。

昔は、旧暦霜月十五日に秋の収穫に感謝して行われ、それに合わせ無病息災を祈願する素朴な祭礼であった。

祭祀の組織は、白幡神社の氏子には上郷・遠西・中西・遠下の四つのクルワ(班)に分かれている。クルワ毎に一年毎に当番となり、四年に一回当番が回ってくることになる。

当番の中で一戸が当屋となり、ヤドと呼ばれ、神社に関わる一を取り仕切る。

11月初旬にワラをすくう(ワラを千歯こきにかけること)ことから始まり、ワラを編んで蛇の形を作っていく。手順を知っているのは、古老に方が一人で、若い人も皆この方の習いながら編んでいく。頭は八つあり。尾には剣が入れられることから、ヤマタノオロチを模したものとも考えられている。祭礼前日の夕方、胴を編む作業が行われる。全長7メートルの蛇の胴体である。昔は、この時お囃子を演奏しながら賑やかにおこなっていたという。

今はその風習は無くなってしまった。今は女性や子どもたちが胴体に結ばれた綱を引いて手伝う。その際女性は一切胴本体には手を振れることはない。

編みあがった胴は頭と合体させ、ヤドに運ばれ、座敷に白幡神社の掛け軸をかけ、酒などをお供えして一夜を過ごす。翌朝、祭礼当日蛇に目を入れ完成となる。前日に目を入れないのは魂が宿り逃げ出してしまうと考えられている。

祭礼は、神事の後、ヤドで酒肴を振る舞われた担ぎ手たちの手によって、威勢よく担ぎ出され、御納戸と呼ばれるヤドの当主を先頭に行列を組んで神社を目指す。お囃子は最後に続き「道中囃子」「大漁節」「いそべ」「あんば返し」を演奏しながら進む。

神社の境内に着くと、蛇はひともみした後、拝殿に安置される。

拝殿では、蛇に抱かせるように置いたオハチ(これをカミノハチと呼ぶ)から赤飯と白飯を半紙に包みお札と一緒に参拝者に渡される。

その後、蛇は拝殿の中でひともみした後、境内から二の鳥居まで運ばれ、鳥居に巻きつけられる。その頃、拝殿では今年の当番から来年と当番への引き継ぎ式が行われる。式が終わると、来年の当番は自分たちの当番の家に向かう。

この牛尾の集落も、計画されている成田空港の第三滑走路の延長上にあり、建設が始まると集団移転の対象となり、この蛇祭りも存続が危ぶまれている。